2017年4月10日

オンリーワン・ナンバーワン

・ダイヤモンドのランク分け

・日本人が手にできる宝石

・宝石商・加工職人のプライド


こんにちは、齋藤です。
今回は、「~宝石業界において日本が置かれている状況~」を説明します。


オンリーワン・ナンバーワンを見極める

 日本では、ダイヤモンドのクラス分けを4Cで表していますが、世界市場では、カットされる前の原石からすでにランク分けされているのです。
 
 透明度の違いを分かりやすく説明するために同じダイヤモンドを次のようにして見た時の状態を悪いものから順に挙げてみます。

①すりガラスを通して見たような感じのダイヤ
②半透明なビニールを通して見たような感じのダイヤ
③透明なセロハンを通して見たような感じのダイヤ
④透明なガラスを通して見たような感じのダイヤ
⑤ノーマルな状態で見たダイヤ
 
と言った様に透明度の差によってランク分けされているのです。
 
 ダイヤの中に発光体でも在るかのように光って見える物ほど透明度が良くクオリティの高いダイヤモンドと言えるでしょう。

 透明度の高いものほど光の反射によって強く光る訳ですが、気を付けなければいけないのが、ダイヤに施されたカット面がキラキラ光って見えているだけの物もあるという事です。一見同じように光っていると思われがちですが、原石で比べると全く違う物ですのでランク分けされると雲泥の差があります。
 けれど、日本では4C表記が重視され、透明度に関してはあまり触れられません。
ですから、本当に質の良いものを手に入れたいなら4Cに惑わされることなく透明度の良さを見極める必要があります。

 ダイヤモンドと言えば宝石として認識されていますが、工業用として使われるダイヤモンドもあるのです。 
 同じ1ctサイズのダイヤでも透明度の高い宝石として認められる物は100万円以上しますし、すりガラスの様な光らない工業用ダイヤとして扱われる物は数万円であります。

 宝石商として長年宝石に携わってきた私が、今、腹立たしく思うのは、この工業用ダイヤをキャスト枠に入れてジュエリーとして販売しているメーカーがあるという現状です。
アクセサリーとして楽しむというのならまだしも、ジュエリーと称されるのはいかがなものでしょうか?私には受け入れがたい現実です。

 十数年前になりますが、私が大変ショックを受け、悔しく悲しい思いをした話です。
 
 取引先だったダイヤモンド会社の社長の持ち物だというダイヤモンドのルースを見せて頂いた時の事です。私はそのダイヤのあまりの美しさに言葉を失ったのです。

社長から
「あなたは、日本で唯一ダイヤモンドが見分けられる人だ」と褒めて頂いたのですが、
調子に乗った私は
「ダイヤの原石を見せてほしい。できるなら買いたい」とお願いしてみました。
すると
「あなたでも原石を見分けるのは難しいだろうからワンカット入れてあげます。」
「どのランクの物がほしいのですか?」と聞かれ、
軽い調子で
「VSクラスのDカラーの物」と答えたのです。
ところが
「原石と一言で言うけれど2000種類に分けられているのですよ!」
「何番目あたりのVSクラスですか?」と聞き返され、
訳が分からなくなった私は、原石を手に入れるのは諦めました。
 
 よくよく聞いてみると、ダイヤモンドはカットされる前の原石で2000にランク分けされる事、ランクごとにカットされたダイヤに4Cのクラス付けがされる事、さらには、日本に輸出されているダイヤモンドは、1000番以下のダイヤであるから、上位ランクのダイヤモンドを日本人が目にする事は無いと聞かされ、日本が置かれている状況をその時初めて知ったのです。
 以前、私は、これまでに見たことがないとてもきれいなダイヤモンド手に入れたことがありました。「こんなきれいなダイヤはめったに手に入らない」と言われていたのですがお金さえ出せばいつでも買える物だと思っていたのです。
 そして、あるバイヤーから聞いた宝石を手に入れられる優先順位の話を思い出さずにはいられませんでした。
 それは、宝石が採れるとまず欧米へ持って行くのでそこで大粒で良いものは売れてしまうという事、アジアを回って最後に日本に入ってくるので良いものは残っていないという事。ただ、ヨーロッパでは小さいものは売れないので小粒であれば良いものが手に入る可能性はあるという何とも言い難い悔しい話でした。
 ですから、この話を聞かされた時は大変大きなショックを受けましたし、受け入れなければならない現実だという事を改めて思い知らされたのです。
 最近の日本における宝石業界の状況を見ても、追い打ちを掛けられるかの如く、先代から宝石を受け継いだ人達がその価値を知ろうともせず手放してしまい、いつの間にか日本から良い宝石が消えてなくなっているという現状が只々悲しいばかりです。

 
私は、宝石商であり、加工職人でもあります。
 
 嬉しい事に、ダイヤモンド会社の社長から日本の加工技術を絶賛して頂きました。
「リングを0.05㎜ずつ手で削る技術はすごい」と言ってくれました。
私は
「その様に削れるヤスリがある事がすごいのです」と答えたのですが、残念なことにそのヤスリも今では手に入れることができなくなりました。
ヤスリを作る業者もなくなり、海外の物に頼るしかないのが現状です。

「ヤスリで削る技術だけでなく、ハンマーで0.06㎜まで厚みを調整する技術も受け継がれ
 ています」
「私の親方は、京都で明治から大正そして昭和へと受け継がれてきた技術をその時代と共
 に進化させながら弟子達へ伝承している人で、私もその技術を受け継いだ一人です」と伝えると
「ダイヤモンドの研磨技術も同じです」と言われました。

・アポロンエイトカット(八本の矢が見える究極のカット)
・144面カット
・ブリッジカット(一面一面反射角を見ながらカット)

これらのカットは、カットマン(研磨職人)の技術によって生み出されてきたのです。
このダイヤモンド会社の社長もかつては優秀なカットマンだったそうです。

社長は、私の事を
「日本人には珍しく、オンリーワンかナンバーワンなのかを解って話をする人だ」と言いました。

ダイヤモンドで例えるなら
ピンク・ブルー・イエローなどのカラーダイヤは特殊なダイヤモンドでオンリーワンと言えるでしょうし、数少ないクオリティの高いダイヤモンドはナンバーワンだと言えるのでしょう。
 そして何より肝心なのが、それらを見極められるという事です。

 本物や究極を見極める重要性を、同じ職人として分かり合える気がしました。

・フローレス・ファンシーピンク
・フローレス・クリアー(高い透明度)・アポロンエイトカット
・VVS2・ファンシーライトピンク・(非常に高い透明度)

 これらオンリーワンの中のナンバーワンと言えるダイヤモンドを縁あって私は手に入れることができました。
 また、これから先これらの宝石を見られる人・手に入れられる人は宝石や私との何かの縁や運を持ち合わせ、その良さの違いが解るほんの一握りの人達なのでしょうし、今の日本の状況でそれを望むのは、大変難しい事かも知れませんが、一人でも多くの人が本物の宝石(オンリーワン)・究極の宝石(ナンバーワン)を探し求めてくれることを願います。




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今回はここまでにして、次回は「~~について」をお話ししたいと思います。

2016年12月5日

世界で一つの真珠

こんにちは、斎藤です。

今回は、~ 私が手にした宝石(真珠) ~ についてご紹介します。


真珠との出会い



前回、私が初めて買ったパールのネックレスが今もパールの色見本になっているというお話しをしましたが、振り返ってみるとパールとは不思議な縁があります。

海の水が汚れ、温暖化の影響を受けて良いものが採れにくくなっていた頃、知人のお父様が真珠の養殖をされていたのを知りました。
そして、真珠を見せていただく機会があったのです。

今までに見たことのないピンク・グリーン・ブルー・シルバーなどの色珠で前処理など一切されていない貝から取り上げたままのまさに「マダマ」です。
オリエント効果のある本当に美しい真珠を目にしたのです。

これまで真珠の養殖者は誰一人として成功しなかった色珠に六十年の人生を費やし成功されたという事でした。
私は、初めて目にする色に感嘆と驚きの声を上げて見入っていたのですが自慢げに嬉しそうな顔のご主人の横で奥様は、家を2~3軒は潰されたとずいぶん憤慨されていました。
一口では言い表せないほど大変な道のりだったのでしょうね。

ご高齢なこともあり、養殖の仕事を辞められると聞き、さらに跡継ぎがいないので誰も作り方を知らないと聞かされ大変残念に思いました。

何とか一つ譲って貰えないかとお願いしたら、私の事を気に入ったからと言って全部譲って下さったのです。
「家を2~3軒・・・・」と奥様から聞かされていたので本当に申し訳ない気持ちと嬉しい感謝の気持ちで一杯でした。

この真珠を鑑別に出したのですが、初めて目にする色で見本となる色がないうえに、無穴の珠なので、どのようにして出来たものか調べようがないから鑑別できないと言われ、鑑別書を作成してもらえなかったのです。

その後、色珠の作り方を伝授されることなく唯一の養殖者であるご主人も亡くなられ、何度となくこの鑑定機関とは問答を繰り返したのですが同じ事でした。

最近、再度事情を説明したところ、やっと理解しては頂けたのですが、現存する真珠に同じような色珠が他にないため、やはり鑑別書ではなく報告書にとどまりました。

十年たった現在でも、この色珠の養殖に成功した人はなく、遺作となりました。

私にとっては大切なコレクションの一つです。



真珠にはアコヤや南洋の他にも淡水パールがあります。

淡水と言えば形が不規則で小さな物が大半です。
最近では形が円に近づいてきているようですが、大きな真円の珠は、取れないとされています。


琵琶湖で淡水パールの養殖をされていた方との縁もあり、珍しい淡水パールを手にすることができました。

なんと12㎜の真円でしかもピンクの淡水パールです。


どうしてできたのか今でもわからないという事です。





今回のまとめ

人との縁が宝石との縁をつないでくれる
私が手にした真珠は世界で一つの物ばかりです


今回はここまでにしたいと思います。

2016年10月14日

宝石のパワーと不思議

・宝石は小さくても綺麗な石にパワーがある

・宝石のパワーで次の宝石を呼び寄せる

・宝石にまつわる不思議な出来事


こんにちは、斎藤です。
今回は、「~宝石のパワーが次の宝石を呼びよせた不思議な体験~」をご紹介します。


宝石が宝石を呼ぶ

さて、前回 ~宝石との縁は人との縁~ とお話ししました。

今回は、宝石の持つパワーでさらなるパワーを持つ宝石と出会った体験談をご紹介します。


前回、ある宝石の展示会で目にしたムゾーやチボールのエメラルドを持ちたくなったというお話をしました。

大変高価な物でしたが、ほしいほしいと思いを募らせ知り合いの業者にも尋ね回っていました。

ある日、少し小さめでしたがチボールの濃くて綺麗なエメラルドを手にすることができました。

チボール産は、稀少なうえ大変高価な物でしたので、財力のない私には小さくても手にできた事が本当にうれしかったのです。

当時、コロンビアの情勢は悪く、エメラルド鉱山への立ち入りは厳しい状況でしたのでエメラルドを買い付けるのも難しい時代でした。
そんな時に私が手にすることができたのは、人との縁のお陰でしょう。

一つ願いが叶うともう一つと欲が出るものです。次はムゾー ・ ・ ・ と!

しばらくして突然その日は訪れました。

知り合いの業者の友人がコロンビアでエメラルドを原石から扱っている事を知りました。

「ノンオイルで青グリーンで4ctsサイズの物がほしい」と無茶なお願いをしてみたのです。

なんと 「一つだけなら譲ってもいい」と言われ、手に入れることができました。

色の薄いエメラルドのノンオイルは見かけるのですが、色の濃いものは非常に少なく、稀少な物ばかり次々と手にできる事はとても嬉しかったのですが反面不思議でもありました。

サファイアの時もそうでしたが、小さくても綺麗で稀少な物を手にした後に別の稀少で大きなものが手に入るのです。

今回のエメラルドもそうでした。
「チボールがムゾーを呼んでくれたのか?」と思いました。

宝石が宝石を呼んだのです。


こんな話もありました。

オーストラリアにブラックオパールを買い付けに行った時、ある鉱山会社の社長宅で素晴らしい数々の石を見せてもらいました。

私が気に入った石は少々値段が高く、手持ちがなかったため、諦めて別の石を買いました。

せめて目に焼き付けておこうとしげしげと何度も見つめていたのですが、時間がきてしまい名残惜しくも帰るしかありませんでした。

社長は、私の見る目を褒めてくれ、気に入ったなら持って帰りなさいと言ってくれたのですが、その頃の私は無知で、後日送金のことなど分からず、手持ちがないからと断ってしまったのです。

しばらくして、その会社の日本の代表の方が訪ねて来てくれたのです。

オーストラリアで見せてもらったブラックオパールの事を話したら、今度オーストラリアへ行くので社長に聞いてみると言ってくれ、私は期待して待つ事にしました。

嬉しかったのは、社長が私を覚えていてくれたことです。
けれど残念な事に、その石はすでに売れてしまっていました。

それからは、日本の代表とのお付き合いが始まり、いろんなブラックオパールを見せてもらい、私は石について大変勉強させてもらいながら珍しいブラックオパールを集めることができました。

それでも、本来の黒地のブラックオパールにはまだお目にかかれていませんでした。

そんなある日、「写真撮影をさせてもらえないかと言われたのだけれど、齋藤さんの承諾が必要だから」と突然電話がかかってきたのです。

意味がわからず、聞き質したところ、「鉱山会社社長のコレクションのブラックオパールが日本の有名な展示会に出展されており、皆から一目置かれてはいるけど、とても買えないので写真だけでも撮らせてほしいという事になっているんです。けれど、社長の意向は買い手がなかったら齋藤さんにという事なので確認の電話をしているんです。」というのです。

寝耳に水でびっくりしたのですが、不思議な事にそのブラックオパールがどんな物か見てもいないのに私が買うものなら、勝手に撮られては困ると返事したのです。

社長との信頼関係がそうさせたのでしょうね。

後日、私が手にしたそのブラックオパールは本来の黒地に青と赤の二重層になったもので10色以上(赤系4色・青系4色・緑系4色・ゴールド)入っており、ハーレクインタイプの稀少で価値あるもので
まさに私が待ち望んでいたブラックオパールでした。


また、こんな話もあります。

いくつか綺麗なルビーは持っていたのですがピジョンブラッドと言われるルビーがほしいと願っていた時でした。

香港の宝石店で7年間展示されていたルビーらしいのですが、その店は、サファイアの専門店だったらしく、ルビーは専門外なので興味のある人はいないかと知人を介して私の所に買わないかと話がきたのです。

これまでに見たことのないまさにビジョンブラッドのルビーでした。

しかし、金額もこれまでにないものでしたので数日大変悩みました。

私が買うと決めた途端、これまで7年間も展示されていたのに香港や台湾の宝石商から次々と買戻しの電話が入るという不思議な出来事がありました。


何より不思議に思うのは、さほど財力を持ち合わせていない私が、その都度、必要な分だけのお金を自然と用意できてきたことです。



今回のまとめ

宝石は小さくても綺麗な物にパワーがあります。

パワーある宝石はさらなるパワーの宝石を呼び寄せます。
パワーある宝石を持つ事でそのパワーの恩恵を受けられるのです。


今回はここまでにして、次回は「~私が手にした宝石~について」をお話ししたいと思います。